第4回WBC中国代表帯同レポート

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2月23日から3月10日にかけて、第4回WBC中国代表アスレティックトレーナーとして帯同をしていました。

今回はWBCの裏側と仕事内容、中国野球の現状に関して簡単に皆さんにご紹介できればと思います。実はWBC中国代表チームにアスレティックトレーナーとして関わるのは今回は初めてではありません。2013年に行われた前回大会にも中国代表チームに帯同しました。

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中国という国にそもそも”野球”というイメージがない人も多いのではないでしょうか?

実際、未だ野球発展途上の国であり、中国国内でも認知度は決して高いとは言えません。MLB(メジャーリーグ)が中国に4つのアカデミーを作り若手の育成に力を入れています。アメリカ人コーチやトレーナーを雇い、将来のメジャーリーガーを中国から出すべく少しずつ環境を整備している最中です。

しかし、中国国内には同様にCBL(中国野球リーグ)が存在し、そこでプレーをする選手達はいわゆる”公務員”的な雇用体系。野球選手でありながら安定した職であるという特殊な環境が、海外へ挑戦する意欲や流れを止めてしまっています。

その代わり、MLBアカデミーで練習している選手達が目指すのは海外。彼らは貪欲に世界を視野に入れているのです。今回のWBCでは、MLBアカデミーから選抜された若い選手達とCBLから来たベテラン勢の混合チーム。そして、中国国籍は持っているがアメリカでプレーしてきた選手達も加わって過去最強の布陣で臨んだわけです。とはいってもやはり国を代表する他国のレベルは高く我々は惨敗でしたが、前回よりも遥かにレベルは上がったことは間違いありませんでした。

 

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こういった野球の短期決戦におけるアスレティックトレーナーの仕事は、主にトリートメントやケアです。

ファーストラウンドは3連戦。野手は毎日プレーをします。試合後にどれだけ回復して次の試合を迎えられるかがキーであり、ホテルの一室をトレーニングルームに変えてそこでトリートメントを行います。

トレーニングルームにある全ての備品はMLBが全ての国の代表トレーナーに提供をし、同じだけのサポートを受けることができます。テーピングからホットパックや薬、ありとあらゆるサポートに必要なものはカバーされています。

ケアやトリートメントだけではありません。試合中にもアスレティックトレーナーの重要な仕事があります。もし、万が一フィールド上で怪我が起きた時はその緊急事態に対して落ち着いて対応ができなくてはいけません。今回は東京ドームで行われたWBCの第1次、第2次予選中は救急車が常駐し、看護師と救急救命士がいつ何が起きてもいいようにスタンバイしていました。また、救急車まで出す必要はないけれど、外野で怪我をして動けないなど搬送用として日本で初めて緊急時用のゴルフカートが常時スタンバイをしていました。これはアメリカでは当たり前にどこにでもあるものですが、スパインボード(担架)が乗るように設計された緊急時搬送用のカートです。

 

 
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中国はまだまだアスレティックトレーニングやスポーツ医学が現場レベルまで広がっておらず、今後適切なセルフケア方法やトレーニングを伝えていければと思っています。関わる国や場所を問わず仕事をすることが当たり前になれば、自分の能力を生かす現場はいくらでもあります。

大会前に中国チームはアリゾナでキャンプを行いました。その様子が『Baseball Documentary "Dream Chaser" -Yuxiao Fan』として中国チームメディア班によって製作されています。WBC期間中のドキュメンタリーも近日公開です。